世界クラスの従業員や組織は何ですか
Coach's VIEW 株式会社コーチ・エィのエグゼクティブコーチによる組織変革や人材育成 リーダーシップ開発 コーチングのリレーコラム
グローバルに展開するビジネスでは、
「越えるべき垣根」が様々なレベルで存在します。
大きな仕事を成し遂げてきたシニア・エグゼクティブでさえ
越えるのをためらってしまう、または諦めてしまうような
大きな垣根も存在します。
CCL(Center for Creative Leadership)は、
2008年~2009年に、12か国、25のグローバル企業で、
15年以上の経営経験と最低500名の部下を持った経験のある
128名のシニア・エグゼクティブを対象に
「異なる組織間のコラボレーションを推進するリーダーシップ」(※1)
に関するリサーチを行いました。
このリサ―チでは、
「異なる組織間のコラボレーションを推進するリーダーシップ」を
『より高いビジョンあるいはゴールのために、
方向性を創り出し、連携を創り出し、
境界を越えてコミットメントを創り出す能力』
と定義した上で、
「グローバルビジネスの世界は、ますます複雑に、相互依存になっており、
リーダーシップにおいても、従来の
『組織の内側を管理し、境界を守るリーダーシップ』から、
『境界を越えた(boundary spanning)リーダーシップ』への
移行が求められている」
と提言しています。
こうしたリーダーシップについて、
対象者のうち、86%のシニア・エグゼクティブが、
「リーダーとしての役割の中でも、
『境界を越えて効果的に仕事をする』能力が『非常に重要』」だと
回答しています。
しかし、その一方で、自分がその能力について
「非常に有能である(very effective)」と
回答したシニア・エグゼクティブは、7%しかいませんでした。
つまり、ほとんどのシニア・エグゼクティブが
境界を越えてより高いビジネスゴールを達成することが
求められていることを理解しながらも、
それを実現出来ていないことを自覚している、
ということがわかります。
より高いビジネスゴールを達成していくために
いかに垣根を越えたリーダーシップを発揮するかは、
エグゼクティブ・コーチングの中でも
重要なテーマの一つです。
私はいま、日系製造業の香港法人で、
製品部門の販売責任者をされている日本人Aさんをコーチしています。
彼は、香港と中国華南地区での販売の全責任を担っています。
先日、Aさんの部下である香港人Bさんに対して、
Aさんに関するインタビュー(ステークホルダーインタビュー)
を行いました。
Bさんは、Aさんのコミュニケーションを
以下の点で高く評価していました。
・話す時間を取ってくれる
・部下のアイディアを受け入れてくれる
・公平である
・指示が明確である
など。
一方で、BさんはAさんの課題として、
「日本本社と香港の現場との調整が足りない」
ということを強く指摘していました。
Bさん曰く、
「例えば、日本本社の価格ポリシーは、
現場の実情に合わないことが多いんです。
中国マーケットでは、品質はそれほど高くなくてもよいので、
もっと低価格なものが求められているんですよ。
本社と現場をもっとつないで連携して
ビジネスを作っていくために、
Aさんには両者間の情報を調整して、
バランスを取ってほしいのです」とのこと。
Bさんからのこうしたフィードバックを受けて、
Aさんは、
「こちらと日本本社をつなぐことが私の課題だということは、
もちろん、これまでも、わかっていたんですけどね、、、。
なんとなくウヤムヤにしていた気がします。
確かに今、この組織のパフォーマンスをさらに上げるには、
本気でこのことと向き合わないといけませんね」
とおっしゃっていました。
Aさんは、本社の方針は制度的なものであり、
現場からの意見を本社に言ってはみるものの、
聞き入れられなくても仕方のないこととして、
諦めてきました。
しかし、コーチングセッションの中で、Aさんは
「"本社に言ってみる"以外にも何ができるかを考えてみると
香港法人内でも事業部を越えて一致した見解を作ることや、
海外の他拠点のキーマンとコンセンサスを作ることなどで
本社に対する提言のインパクトを強められるのではないか」
と、色々なアイディアが浮かんできたようです。
さらにセッションでは、Aさんがこのことについて誰と話すのか、
香港法人内、他の海外拠点のキーマンをリストアップしました。
また、本社においても、今までとは違ったチャネルで
どんなアプローチが可能なのか、という視点で
これまでの相手とは違うキーマンをリストアップしました。
出来上がったリストを見て、Aさんはつぶやきました。
「香港法人内には普段、敬遠してあまり話さない人もいるし、
他拠点や本社には話そうと思ったこともない人もいますね。
こうした目前の『一対一』の垣根を越えずに、
本社との垣根を越えられるわけがありませんね」
目の前の小さな垣根を越えることによって、
より大きな垣根を越えていく、
そうしたアプローチをAさんは、選択しました。
本社とどのようなコミュニケーションを作っていくのか、
そのコミュニケーションを効果的にするために、
香港法人内でどのような協力を取り付けるのか、
また、他の海外拠点とどのように連携するのかについて、
Aさんは今、大きな絵を描き始めています。
そして、周りに協力者が増えてきていることで、
その手応えを感じ始めています。
Aさんは、これからいくつもの境界を越えようとしています。
本社と現地法人という、縦の境界または、地理的な境界、
日本人と香港人、あるいは中国人というデモグラフィックな境界、
部門間または拠点間という横の境界。
Aさんの直面している出来事は、
組織が創造的になり、イノベーションを起こしていくために
「垣根を越えたリーダーシップ」が求められる一例だと言えましょう。
こうしたリーダーが増えれば増えるほど、
その企業のオペレーションは、創造的になっていくのではないでしょうか。
あなたの目の前には、
どのような「越えるべき」垣根がありますか?
【参考資料】
※1 "Boundary Spanning Leadership"
Mission Critical Perspective from the Executive Suite
Organizational Leadership White Paper Series
2009 Center for Creative Leadership
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